お盆がすんだら海に入ってはいけない、といわれます。
夏の終わりの海は人気もなくなって寂しいし
太陽の日差しもすこし傾いで、
風も秋の気配になります。
特にお盆のあとはクラゲが出るので危ないです。
海の中にはクラゲなんて実は
いつだっているのですがお盆のあとには
特に多くなるというのは間違っていません。
ただ、何がどう危ないのかについて
詳しく紹介していきます。
お盆のあとの海にクラゲがたくさんいる理由!
海の中や波の上をぷかぷかと浮かんでいるクラゲ
最近は水族館で人気が出ていますが
水の中にいる生き物なので、
あまり自然のクラゲをみる機会は少ないですね。
この生き物は、実は海の中では
珍しい生き物ではないのです。
ただ、季節によって場所によって、
数がたくさんになったり、
大きいものが増えたりします。
これはクラゲの一生のサイクルに関係した変化です。
日本近海のクラゲには約200種類が記録されています。
クラゲは海の沖合いを漂っているものが多く、
世界中の海で広くさまよっているので、
日本の海に住んでいる、というよりは
浮いているのが見つかったというのが、
実情に近いのですが。
このうち、日本の沿岸部で広く見られ、
人が海水浴を楽しめるような浅瀬の海で見られるもの
特に人と接触したり、刺したりすることで
海の危険な生き物となるクラゲは5種類ほどです。
ミズクラゲ、アンドンクラゲ、アカクラゲ
そしてカツオノエボシの4種類が
本州で見られる要注意生物
奄美大から沖縄にはもう一種、
ハブクラゲがいます。
ミズクラゲは一番知られた種類で
海辺を歩いていて、丸いゼリーの塊みたいな
ぶよぶよしたものが打ち上げられているのを
見つけたことのある人もいるでしょう。
直径10センチから30センチくらい、
傘といわれている丸い透明な、
おわんを伏せたような上部の中ほどに
ハート型の白い模様が4つ見えます。
さわってみると寒天のような、
すこし手応えのある、
強く押したら崩れそうな奴で
ひっくり返すと裏側には、
短いタコの足みたいなものが4本ついています。
動いているところはほとんどなくて、
傘の周りと裏側の柔かそうなところが
波打っているみたいですが、
生きているようには見えません。
このミズクラゲは、海の中にも
このままの格好で漂っていて
人の足が立つような深さの海でも、
水面から1メートルほどのところを
ふわふわと漂っています。
話しかけても、つついても、
棒で打ったりしてもなにも反応しませんが、
よく見ていると足のほうだけ
ときどき縮めたり伸ばしたりしています。
このクラゲは弱い毒をもっていて、
足のところと傘の周辺に触ると
刺されることがあります。
さされたところはちくちくぴりぴりします。
春先に孵った幼生が、
海底の岩場などに着生し三ヶ月ほどかけて
体の形を変えながら分裂、成長し
夏のはじめごろにクラゲの姿になって
10月ごろには一生を終えて分解され、姿を消します。
最初に生まれたばかりの幼生は
海の中を泳ぎますが、
すぐに適当な場所を見つけて
海底に着き、ポリプという
小型のイソギンチャクのような姿になります。
その後、ポリプは体を分裂させて数を増やし
やがてそれぞれの体がばらばらに泳ぎ出して
それぞれが小さなクラゲになっていきます。
この稚クラゲたちは、
海水中のプランクトンを食べて育ちますが
自分自身も小型の魚たちの餌になって
食べられてしまいます。
8月ころには大きく育ったものが見られます。
夏の終わりには場所によっては、
驚くほど集まって海の中がミズクラゲでいっぱい、
ぶつからずに海の中にはいることが
できないほどになることもあります。
幼生から成長した大人まで、泳ぐ力は
ほとんどないのでたくさん発生するというのは、
その海にミズクラゲにとってよい条件があるのです。
一つはポリプが育ちやすいこと。
港湾施設などが整備されていて、
海の底にポリプが着ける場所が多ければ、
ポリプの大群落が育ちます。
それに、生活排水が海に流れ込み
水の栄養分が高くなると
プランクトンが大量に増加して、
多くのクラゲは成長に適当な餌のスープの中で
育つことができます。
工場などの暖かい排水で海が温んでいれば
クラゲたちは暖かい海の中で
気持ちよく成長できます。
クラゲたちが住む水の中に、
魚たちがあまりいなければ
プランクトンを奪い合うこともなく、
自分たちが食べられることもなく、
海の中をクラゲたちだけで独り占めできるのです。
この条件は、人が住む海の近く漁師町の近くで、
生活の排水が流れ込む湾の隣りといった
海の環境で、そろいやすいのです。
お盆のあとは入らない方が良い最大の理由は電気クラゲ!
アンドンクラゲはミズクラゲのように
大群で現れることはありません。
このクラゲは黒潮に乗って季節とともに北上し、
夏の盛りに日本の近海に現れます。
時期的にお盆の季節に姿を現すことと
箱型の体を行燈に見立てて、この名があります。
繁殖するのは西日本までですが、
成体はそのまま海流にのって北上し、
北海道の近くまで姿をみせます。
姿が完全に透明で、
水の中ではほとんど見えない上
長い触手が体から伸びていて、
泳ぐアンドンクラゲの後ろに
長い糸を引いているのです。
この触手は、クラゲが魚を捕らえて
食べるための武器、したがって猛毒をもっており、
素肌に触れば感電したような、
痛みを伴う刺激がはしります。
アカクラゲはおわん型の傘に
赤褐色の放射状の筋があるきれいなクラゲで、
水の上から良く見えます。
水の中では長い触手と
足がひらひらと傘の下につながり、
スカーフが水の中に沈んでいるように見えます。
このクラゲは有毒ですが、寒い海が好きで、
冬から春にかけて沿岸で見られるので
お盆の時期にはあまり姿を見ることはありません。
カツオノエボシは変わった格好のクラゲで
青い風船のような頭の部分を海上に浮かせて
その下に長い触手を伸ばして漂っています。
海の中で出会うときは、海面に浮いている
青いビニール袋のようなものが目に付きます。
もしもこれが視界に入ったら、
大急ぎでその海を出ましょう。
カツオノエボシの浮き袋の部分は
10センチ足らずの小さい袋ですが
触手は海底まで伸びる長さがあります。
波の具合や海流の向きによっては、
触手はあなたのすぐそばを走っていることがあります。
このクラゲは猛毒のクラゲで刺されると
電気が走ったような激痛、触れたところは
ミミズ腫れとなりその後は引きつって
爛れた筋のようになって、長く残ります。
時には死ぬ事もあります。
また、この生物毒は体内に
アレルギー反応を起こすため
いったん刺された後、再び刺されると
アナフィラキシー反応を起こして死ぬことがあります。
カツオノエボシ自体は
浮遊生物であり、泳げません。
したがって、夏に特に多く発生するわけでは
ありませんが風を受けて異動し、
海流に乗って名前の通りカツオの時期に
日本沿岸にやってきます。
ここに上げた、毒性の高いクラゲたちはどれも、
刺されると痺れたような痛みがあるため、
電気クラゲと呼ばれることがあります。
実際に電気を発生させて
人を痺れさせるわけではありません。
クラゲの毒はクラゲが死んでも、
危険性を失いません。
死んだクラゲが海岸に打ち寄せられていた場合でも
近づかないようにしましょう。
乾燥していても触手に触れれば、
毒の矢の攻撃を受けます。
まとめ
季節によるミズクラゲの消長による大量発生、
そして海流に乗ってくる電気クラゲたちの毒は
体が小さいにもかかわらず、人にとって
大変危険な、特には命を奪う生き物になります。
お盆のころ、お休みを取りやすい時期ですが
夏の終わりの海に入るときは十分に気をつけて
危ないと思ったら水に入るのは控えましょう。